リテンションマネジメントを実施する目的やメリット、5つの事例を紹介
- 組織診断

リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、従業員に長く会社で働いてもらい、その人の能力を発揮してもらう人材定着・従業員活躍のための人事管理手法です。
リテンション(維持や保留、引き留め)とマネジメント(管理する・取り扱う)という言葉を組み合わせた造語です。
社員の能力やスキルを向上させるために実施する教育や研修、従業員の生産性向上やモチベーション向上のために実施する福利厚生の施策などを通して、従業員が会社の中で成長できることを実感してもらうことや魅力を感じてもらうことで離職の防止・人材の定着に繋げていくものがリテンションマネジメントです。
リテンションマネジメントが重要視されている経済的背景
これまでは終身雇用が当たり前の時代でしたが、生産性人口の減少や求人倍率の上昇により、転職がしやすい状況にあること、転職を支援するエージェントやサービスが増加し、自分の周囲でも転職活動を行うことが当たり前になりつつあります。
今の会社に不満があり、その不満が解消されない場合は、より働きやすい会社や条件の良い会社に転職をしてしまうため、企業としては採用活動ももちろん従業ではありますが、「従業員全員に長く働き続けてもらうこと」、「会社で成果を発揮してもらうこと」この二つに力を入れる企業が増えています。
こういった社会的な背景と各社も実感として、組織への投資に力を入れないといけないという認識を持ち始めたという経済的な背景があり、リテンションマネジメントという言葉が注目をされています。
リテンションマネジメントを実施する目的・メリット
リテンションマネジメントの目的は前述の通り
・従業員に長く勤続してもらうこと
・従業員に能力やスキルを発揮してもらうこと
大きくこの2つです。
この2つの目的が達成されることによりどのようなメリットがあるのか紹介します。
1.採用活動にかかるコストの低減
従業員が長く勤続することで欠員補充のための採用自体が減ります。
その分の採用活動にかかるはずだった費用が低減されます。
2.教育にかかるコストの低減
新入社員が入った場合は、会社や事業について知ってもらうための研修、事業部に配属されてからも仕事に慣れるまでのオンボーディング・OJTなどが必要になるため、時間的なコストも必要となります。
新入社員の人数が減ることで、教育にかける時間の総量が削減されるため、教育コストも低減されます。
3.生産性の向上
従業員の入れ替わりが多いと、一時的に他の業務を巻き取ることになったり、新しく担当する方へ引き継ぎを行うために本来の業務を行う時間が減ってしまうこと、精神的な負担が伴うことで生産性が下がる可能性があります。
それが計画通りに人が増えていく、突発的な業務の発生などが減ることでより士気をあげて業務に取り組むことが想定されます。
4.従業員満足度(エンゲージメント)の向上
会社が従業員に対して投資を行うことで、従業員も成長ができるとともに働きやすい環境に整備されていくため、満足度(エンゲージメント)の向上に繋がります。
リテンションマネジメントに取り組む前にやるべきこと
リテンションマネジメントに取り組む前にやるべきことは、「自社の組織のどこに課題があるのかを可視化」することです。
画像:組織改善サービス「ハタラクカルテ」の結果レポートイメージ
リテンションマネジメントに取り組もうと思っても、どのチーム・層に何をやるべきなのかが不明瞭であれば、施策の優先順位をつけることができません。
しかし、上の画像のように組織の中でどこに課題があるかが分かれば、その課題を解決する施策を実行すれば良いという目星が立ちます。
リテンションマネジメントに取り組むにあたっては、「現状把握・課題の可視化」から取り組みましょう。
リテンションマネジメントに関する本や論文
リテンションマネジメントに関して知見を深めるのにオススメの本や論文を紹介します。
人材定着のマネジメント―経営組織のリテンション研究
『人材定着のマネジメント―経営組織のリテンション研究』は、2009年に青山学院大学経営学部の山本教授が執筆されました。
企業が行うリテンションマネジメント問題点、従業員の働き方やキャリア、非正規社員のリテンション施策などについての研究結果がまとめられています。
人材定着のマネジメント―経営組織のリテンション研究の本はこちら
リテンション・マネジメントの実践:病院ブランドを高める看護組織のつくり方
医療経営コンサルタントの永瀬 隆之氏が執筆した本です。
仕事を通した原体験や膨大な調査データ・論理を元に看護組織に特化したブランディングについて幅広くまとめられています。
リテンション・マネジメントの実践:病院ブランドを高める看護組織のつくり方の本はこちら
戦略的人的資源管理における従業員のリテンション・マネジメント―文献展望と仮説の構築
前述の青山学院大学経営学部の山本教授が執筆された論文です。
リテンションマネジメントや戦略的人的管理資源のあるべき姿や今後の課題について調査データの分析から導く仮説を元に考察されています。
「戦略的人的資源管理における従業員のリテンション・マネジメント―文献展望と仮説の構築」『青山経営論集』第42巻第1号の論文はこちら
リテンションマネジメントの事例
リテンションマネジメントで実際の企業で導入されている事例をいくつか紹介します。
事例1:新入社員向けの複数社合同研修の実施
新卒で採用した人数が少ない場合、新入社員も同じような境遇の人がいないため、複数社合同の研修を行い、同じスタートラインから競い合うことで相互に刺激しあい、新入社員の育成に繋がったとのこと。
事例2:スーパーフレックス制度の導入で働き方改革
従業員それぞれに状況や事情が異なるので、各人に適した働き方で働いてもらおうということで、勤務場所や時間を自分で決めることのできるスーパーフレックス制度を導入し、生産性の向上や離職率低下に繋がったとのこと。
事例3:オンライン学習サービスを福利厚生で提供
オンライン学習サービスを従業員が無料で利用できるように福利厚生として提供した会社では、従業員が自分にあった講義を受講し、必要なスキルを身につけてもらいたいということで導入。
自社内の教育・育成だけでなく、社外の知識も取り入れることで生産性を向上させ、会社の業績も伸ばしていきたいと考えているとのこと。
事例4:社内部活動の発足とお金の支援
会社の中でもっとチーム関係なく、情報共有を作りたいということで同じスポーツや趣味が好きな人たちで集まって部活動を発足させ、その活動を支援することに。
結果、従業員が自分の好きなことを元に様々なチームのメンバーでの交流が生まれ、会社でのコミュニケーションが増えた他、チームをまたいでの連携なども円滑になったとのこと。
事例5:離職のそもそもの原因を可視化し、対策を実行
離職率を下げるために、マネージャーや部長に退職しそうな傾向がある方のフォローを手厚く行ってもらうようにしていたが、根本の解決にはならず離職率は一定のところで改善をしなくなったため、離職のそもそもの原因を従業員アンケートで可視化し、解決をしていくことに。
その結果、離職率が下がるとともに、社内の雰囲気も良くなっていったとのこと。
この記事を書いた人
ハタラクカルテ編集部